運転モード¶
1 はじめに¶
本章では、運転モード、目標上下限値温度、在室者表面における放射・対流熱伝達率の総合熱伝達率に対する比の計算方法について定義する。
運転モードとは本章の2節で示される運転方法(Cooling, Heating, Stop_Open, Stop_Close)である。
運転モードや目標上下限温度は、室内の状況(温湿度等)と予め指定された空調モードによって決定される。 空調モードはステップ n ごとに予め指定された値であり、空調スケジュールとも言われる。
本章における全ての計算において、次の値を必要とする。
運転モードに関する入力情報
ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調モード, \(T_{AC,mode,i,n}\)
ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調需要, \(r_{AC,demand,i,n}\)
<運転モードの計算>
作用温度制御・空気温度制御を行うか、PMV制御を行うかによって異なる。
作用温度制御・空気温度制御を行う場合は次の値を必要とする。
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然風利用時の作用温度 \(\theta_{r,OT,ntr,nv,i,n+1}\), ℃
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然風非利用時の作用温度 \(\theta_{r,OT,ntr,non_nv,i,n+1}\), ℃
PMV制御を行う場合は次の値を必要とする。
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然風非利用時の絶対湿度 \(X_{v,r,ntr,non-nv,i,n+1}\), kg/kg(DA)
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然風利用時の絶対湿度 \(X_{v,r,ntr,nv,i,n+1}\), kg/kg(DA)
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然風非利用時の空気温度 \(\theta_{r,ntr,non-nv,i,n+1}\), ℃
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然風利用時の空気温度 \(\theta_{r,ntr,nv,i,n+1}\), ℃
ステップ \(n\) における室 \(i\) の自然風非利用時の平均放射温度 \(\theta_{MRT,hum,ntr,non-nv,i,n+1}\), ℃
ステップ \(n\) における室 \(i\) の自然風利用時の平均放射温度 \(\theta_{MRT,hum,ntr,nv,i,n+1}\), ℃
室 \(i\) の放射暖房の有無
室 \(i\) の放射冷房の有無
次の値が得られる。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の運転モード \(t_{operation,mode,i,n}\)
<目標上下限値の計算>
次の値を必要とする。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の運転モード \(t_{operation,mode,i,n}\)
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然空気温度 \(\theta_{r,ntr,i,n+1}\), ℃
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然平均放射温度 \(\theta_{MRT,hum,ntr,i,n+1}\), ℃
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の自然絶対湿度 \(X_{r,ntr,i,n+1}\), kg/kg(DA)
室 \(i\) の放射暖房の有無
室 \(i\) の放射冷房の有無
室 \(i\) の居住者のMet値
次の値が得られる。
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の目標下限温度 \(\theta_{lower,target,i,n+1}\)
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の目標上限温度 \(\theta_{upper,target,i,n+1}\)
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの対流熱伝達率, W / ( m2 K )
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの放射熱伝達率, W / ( m2 K )
<在室者表面における対流熱伝達率及び放射熱伝達率の総合熱伝達率に対する比>
次の値が得られる。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者表面における対流熱伝達率の総合熱伝達率に対する比 \(k_{c,i,n}\)
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者表面における放射熱伝達率の総合熱伝達率に対する比 \(k_{r,i,n}\)
2 運転モード¶
本節で決定する運転モードは下記の4種類である。
- Cooling
- 冷房運転を行うモード。
- Heating
- 暖房運転を行うモード。
- Stop_Open
- 暖冷房運転を停止し窓を開けるモード。
- Stop_Close
- 暖冷房運転を停止し窓を閉めるモード。
運転モードは、common 要素の ac_method 要素で指定される値とする。
3 制御の種類(運転モードの決定方法の種類)¶
運転モードは、目標下限値を下回った場合は暖房、目標上限値を窓を開けた状態で上回った場合は冷房、窓を開けた状態で下回り窓を開けた状態で上回る場合は停止かつ窓開け、それ以外の場合は停止かつ窓閉めというように決定される。 その場合の指標として、PMV・作用温度・空気温度の3種類が考えられる。
これらを勘案して、運転モードの決定方法として、次の4種類の方法を定める。
- PMV
- PMV制御
- OT
- 作用温度 (OT : Operative Temperature) 制御
- SIMPLE
- 非推奨。OTと同じ制御。互換性のために維持している。SIMPLEモードが指定された場合、本節ではOTと読み替えること。
- AIR_TEPMERTURE
- 空気温度制御
4 目標上下限値の決定方法¶
空調モードとは、1で始まる任意のIDである。
このIDに対応して目標上限値と目標下限値が定められる。
空調をするか否かは別途、ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調需要 \(r_{AC,demand,i,n}\) で定められ、 この値が0より大の場合は何らかの空調を行うことを意味し、この値が0の場合は空調しないことを意味する。
空調しない場合は空調モードを定める意味が無いため、空調モード \(T_{AC,mode,i,n}\) は0としなければならない。
空調モードについて、 IDは、 common 要素の ac_config 要素の mode 要素で指定し、 目標下限値 \(x_{lower,target,i,n}\) は、common 要素の ac_config 要素の lower 要素で指定し、 目標上限値 \(x_{upper,target,i,n}\) は、common 要素の ac_config 要素の upper 要素で指定する。
ac_config 要素が存在しない場合は、次の値が採用される。
運転モードが PMV の場合
mode |
lower |
upper |
|---|---|---|
1 |
\(-0.5\) |
\(0.5\) |
2 |
\(-0.5\) |
\(0.5\) |
運転モードが PMV でない場合
mode |
lower |
upper |
|---|---|---|
1 |
\(20\) |
\(27\) |
2 |
\(20\) |
\(27\) |
ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調モード \(T_{AC,mode,i,n}\) を、 指定のモードに対応する目標下限値に置き換えた値を、 ステップ \(n\) における室 \(i\) の目標下限値 \(x_{lower,target,i,n}\) とし、 指定のモードに対応する目標上限値に置き換えた値を、 ステップ \(n\) における室 \(i\) の目標下限値 \(x_{upper,target,i,n}\) とする。
ただし、 ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調モード \(T_{AC,mode,i,n}\) が0の場合は、 ステップ \(n\) における室 \(i\) の目標下限値 \(x_{lower,target,i,n}\) 及び ステップ \(n\) における室 \(i\) の目標上限値 \(x_{upper,target,i,n}\) の値はどちらも「指定なし」とする。
5 運転モードの決定方法¶
ステップ \(n\) における室 \(i\) の運転モード \(T_{operation_mode,i,n}\) は次のように決定する。
ここで、目標上限値、目標下限値、暖房用参照値、冷房用参照値、窓開け用参照値の意味・単位については、運転モードに依存する。 運転モードが「PMV」の場合はPMV(-)、「OT」または「SIMPLE」の場合は作用温度(℃)、「AIR_TEMPERATURE」の場合は空気温度(℃)である。
ケース 1 Stop_Close
ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調需要 \(r_{ac,demand,i,n}\) が 0 の場合は、"Stop_Close" とする。
ケース 2-1 Heating
ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調需要 \(r_{ac,demand,i,n}\) が 0 より大の場合でかつ、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の暖房用参照値 \(x_{heating,i,n+1}\) がステップ \(n\) における室 \(i\) の目標下限値 \(x_{lower,target,i,n}\) を下回る場合は、 "Heating" とする。
ケース 2-2-1 Cooling
ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調需要 \(r_{ac,demand,i,n}\) が 0 より大の場合でかつ、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の冷房用参照値 \(x_{cooling,i,n+}\) がステップ \(n\) における室 \(i\) の目標上限値 \(x_{upper,target,i,n}\) を上回る場合でかつ、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の窓開け用参照値 \(x_{window_open,i,n+1}\) がステップ \(n\) における室 \(i\) の目標上限値 \(x_{upper,target,i,n}\) を上回る場合は、 "Cooling" とする。
ケース 2-2-2 Window_Open
ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調需要 \(r_{ac,demand,i,n}\) が 0 より大の場合でかつ、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の冷房用参照値 \(x_{cooling,i,n+}\) がステップ \(n\) における室 \(i\) の目標上限値 \(x_{upper,target,i,n}\) を上回る場合でかつ、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の窓開け用参照値 \(x_{window_open,i,n+1}\) がステップ \(n\) における室 \(i\) の目標上限値 \(x_{upper,target,i,n}\) 以下の場合は、 "Window_Open" とする。
ケース 2-3 Stop_Close
ステップ \(n\) における室 \(i\) の空調需要 \(r_{ac,demand,i,n}\) が 0 より大の場合でかつ、 上記のケース 2-1 Heating、ケース 2-2-1 Cooling、ケース 2-2-2 Window_Open のどれも満たさない場合は、 "Stop_Close" とする。
5 暖房用参照値・冷房用参照値・窓開け用参照値¶
暖房用参照値・冷房用参照値・窓開け用参照値は、制御方法がPMVか否かで定義が異なる。
5.1 作用温度制御・空気温度制御の場合¶
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の暖房用参照値 \(x_{heating,i,n+1}\)、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の冷房用参照値 \(x_{cooling,i,n+1}\) 及び ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の窓開け用参照値 \(x_{window_open,i,n+1}\) は次式により表される。
なお、本計算方法では、空気温度制御の場合も放射温度の影響(重み)が0の作用温度であるとみなしているため、 記号説明としては(空気温度ではなく)作用温度として表記している。
5.2 PMV制御の場合¶
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の暖房用参照値 \(x_{heating,i,n+1}\)、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の冷房用参照値 \(x_{cooling,i,n+1}\) 及び ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の窓開け用参照値 \(x_{window_open,i,n+1}\) は次式により表される。
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の暖房判定用のPMV \(pmv_{heating,i,n+1}\) 、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の冷房判定用(窓閉め時)のPMV \(pmv_{cooling,i,n+1}\) 及び ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の冷房判定用(窓開け時)のPMV \(pmv_{window-open,i,n+1}\) は章「PMV」により計算する。
計算に必要とされる値はそれぞれ次表の列「暖房判定用に引き渡す値の記号」、 「冷房判定用(窓閉め時)に引き渡す値の記号」及び 「冷房判定用(窓開け時)に引き渡す値の記号」 の列で与える。
章「PMV」における記号 |
暖房判定用に引き渡す値の記号 |
冷房判定用(窓閉め時)に引き渡す値の記号 |
冷房判定用(窓開け時)に引き渡す値の記号 |
|---|---|---|---|
\(p_{a,i,n}\) |
\(p_{v,r,ntr,non-nv,i,n+1}\) |
\(p_{v,r,ntr,non-nv,i,n+1}\) |
\(p_{v,r,ntr,nv,i,n+1}\) |
\(\theta_{r,i,n}\) |
\(\theta_{r,ntr,non-nv,i,n+1}\) |
\(\theta_{r,ntr,non-nv,i,n+1}\) |
\(\theta_{r,ntr,nv,i,n+1}\) |
\(\theta_{MRT,i,n}\) |
\(\theta_{MRT,hum,ntr,non-nv,i,n+1}\) |
\(\theta_{MRT,hum,ntr,non-nv,i,n+1}\) |
\(\theta_{MRT,hum,ntr,nv,i,n+1}\) |
\(CLO_{i,n}\) |
\(CLO_{heavy}\) |
\(CLO_{light}\) |
\(CLO_{light}\) |
\(v_{hum,i,n}\) |
\(v_{hum,heating,i,n}\) |
\(v_{hum,cooling,i,n}\) |
\(v_{hum,window,open,i,n}\) |
章「PMV」における記号
本章における記号
「PMV計算時の熱伝達率計算に収束計算を行うか固定値を使用するか」は常に「使用しない」とする。 上記の値に加え、室 \(i\) の在室者のMet値 \(Met_{i,n}\) をPMV計算時に与える。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの暖房時の風速 \(v_{hum,heating,i,n}\) は、 室 \(i\) の放射暖房の有無が有りの場合は 0.0 m / s 、無しの場合は 0.2 m / s とする。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの冷房時(窓閉め時)の風速 \(v_{hum,cooling,i,n}\) は、 室 \(i\) の放射冷房の有無が有りの場合は 0.0 m / s 、無しの場合は 0.2 m / s とする。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの冷房時(窓開け時)の風速 \(v_{hum,window,open,i,n}\) は、0.1 m / s とする。
厚着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{heavy}\) 及び 薄着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{light}\) は、章「居住者」で定義する。
6 目標下限温度・目標上限温度・在室者周りの対流熱伝達率・在室者周りの放射熱伝達率¶
6.1 目標下限温度・目標上限温度¶
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の目標下限温度 \(\theta_{lower,target,i,n+1}\) 及び ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の目標上限温度 \(\theta_{upper,target,i,n+1}\) は、 制御方法がPMVか否かで計算方法が異なる。
空気温度制御・作用温度制御の場合、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の目標下限温度 \(\theta_{lower,target,i,n+1}\) は、 ステップ \(n\) における室 \(i\) の目標下限値 \(x_{lower,target,i,n}\) の値に等しく、 ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の目標上限温度 \(\theta_{upper,target,i,n+1}\) は、 ステップ \(n\) における室 \(i\) の目標上限値 \(x_{upper,target,i,n}\) の値に等しいとする。
PMV制御の場合、運転モードに依存して値を決める。
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の目標下限温度 \(\theta_{lower,target,i,n+1}\) は、 ステップ \(n\) の室 \(i\) の運転モードが「暖房」の場合、 章「PMV」の在室者の目標作用温度により求めた値とし、 それ以外の場合は0とする。
ステップ \(n+1\) における室 \(i\) の目標上限温度 \(\theta_{upper,target,i,n+1}\) は、 ステップ \(n\) の室 \(i\) の運転モードが「冷房(窓閉め字)」の場合、 章「PMV」の在室者の目標作用温度により求めた値とし、 それ以外の場合は0とする。
6.2 在室者周りの熱伝達率¶
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの対流熱伝達率 \(h_{hum,c,i,n}\) 、 ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの放射熱伝達率 \(h_{hum,r,i,n}\) 及び ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの総合熱伝達率 \(h_{hum,i,n}\) は、 章「PMV」により求める。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者周りの風速 \(v_{hum,i,n}\) は、 運転モードが「Heating」の場合でかつ室 \(i\) の放射暖房の有無が有りの場合は 0.0 m / s 、 運転モードが「Heating」の場合でかつ室 \(i\) の放射暖房の有無が無しの場合は 0.2 m / s 、 運転モードが「Cooling」の場合でかつ室 \(i\) の放射冷房の有無が有りの場合は 0.0 m / s 、 運転モードが「Cooling」の場合でかつ室 \(i\) の放射冷房の有無が無しの場合は 0.2 m / s 、 運転モードが「Stop_Open」の場合は 0.2 m / s とし、 それ以外の場合は 0.0 m / s とする。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者のClo値 \(CLO_{i,n}\) は、 運転モードが「Heating」の場合は、厚着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{heavy}\) に等しく、 運転モードが「Cooling」の場合は、薄着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{light}\) に等しく、 運転モードが「Stop_Open」の場合は、は、薄着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{light}\) に等しく、 運転モードが「Stop_Open」の場合はは、中間着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{middle}\) に等しいとする。
厚着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{heavy}\) 、 薄着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{light}\) 中間着をした場合の在室者のClo値 \(CLO_{middle}\) は、章「居住者」で定義する。
7 在室者表面における対流熱伝達率及び放射熱伝達率の総合熱伝達率に対する比¶
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者表面における対流熱伝達率の総合熱伝達率に対する比 \(k_{c,i,n}\) は、 制御の種類が「空気温度制御」の場合は 1.0 とし、それ以外の場合は 0.5 とする。
ステップ \(n\) における室 \(i\) の在室者表面における放射熱伝達率の総合熱伝達率に対する比 \(k_{r,i,n}\) は、 制御の種類が「空気温度制御」の場合は 0.0 とし、それ以外の場合は 0.5 とする。